クラブ「姫」は安藤昇の愛人だった時の愛称から名付けた
程なくして、全国指名手配の末に逮捕、収監される安藤昇の姿を見届けるかのように、洋子はこの翌年、銀座7丁目の木造の2階に、バーテン1人、ホステス4人、面積わずか5坪の小さなクラブをオープンする。店名は「姫」と名付けた。この店で安藤の帰りを待っていようと思ったのかもしれない。
山口洋子はオープン当初、次のように振り返っている。
《「姫」をオープンしたのは一九五六年八月八日で、始めた年はいつも忘れてしまうのに、八月八日という開店の日だけはいつもはっきり覚えている》(「ザ・ラスト・ワルツ――『姫』という酒場」山口洋子著/双葉社)