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細田昌志ノンフィクション作家

1971年、岡山市生まれ、鳥取市育ち。CS放送「サムライTV」キャスターから放送作家としてラジオ、テレビの制作に携わり、ノンフィクション作家に。7月に「沢村忠に真空を飛ばせた男 昭和のプロモーター・野口修評伝」(新潮社)が、第43回講談社本田靖春ノンフィクション賞を受賞。

クラブ「姫」は安藤昇の愛人だった時の愛称から名付けた

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 そうは言うが、この回想をうのみにはできない。なぜなら、東映の女優になった年が1957年なのである。これでは女優になる前に、銀座の店をオープンしていたこととなり計算が合わない。「東映時代に安藤と出会ったこと」も「横井事件の翌年に『姫』をオープンしたこと」も、いずれも山口洋子自身が述懐している。安藤との出会いも店の開業も、時系列を勘違いするようなささいな出来事とは思えない。

《始めた年はいつも忘れてしまう》とはつまり、長年にわたってサバを読んでいたからにほかならない。おそらく「姫」がオープンしたのは1959年の8月8日で間違いないのだろう。

 くしくも同じ年の10月、野口修も家業の野口拳闘クラブを「野口ボクシングクラブ」と改称し、その興行部門を「野口プロモーション」として起業している。両親の庇護下にありながら、ボクシングプロモーターとして独り歩きを始めた25歳の野口修。クラブママとして小さいながらも一国一城の主となった22歳の山口洋子。

 若い2人は同じような時期に、独り立ちをしたのである。 =つづく

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