<18>“30億円を貢いだ男”の本は売れない? 逆転で出版が決まった第1弾
大きな円卓のテーブルには鼻の下にひげをたくわえた見慣れない中年の男性が座っていた。
「ほう、これがねえ。一体いくら支払ったんですか? 凄いですねえ」
本を手にしながら、その男はドン・ファンに聞いた。
「フフフッ」
小ずるいドン・ファンは笑ってごまかしている。どうやら相手の男は、社長が自費出版しているのだとハナから信じ切っているようだ。
「お~い、オレにもコレを送ってくれよ」
私はこのとき初めて、この男が昔アプリコで働き役員として名前を貸しているMであることを知る。彼が自己紹介をしたのではなく、大下さんから聞いたのだ。不遜を絵に描いたような横柄な態度。それでいてドン・ファンの横から離れず、バッタのようにペコペコとしているのだから完全なゴマすり野郎であった。ドン・ファンに借金があり、ドン・ファンの死後に「いごん」を出すのも彼だった。 =つづく