自民党総裁選が興行には追い風だが…「総理の夫」は映画の中だけにしてほしい
自民党総裁選がメディアジャックの様相だ。岸田文雄と河野太郎の対決が注目を集めているが、盛り上がっているのは野田聖子と高市早苗という2人の女性候補。情勢的には厳しそうだが、安倍晋三前首相が高市を推していることから、その熱狂的支持者がSNSなどで「初の女性首相に」などと先走っている。
【写真】この記事の関連写真を見る(26枚)
そんな中、29日の投開票直前に公開された映画が「総理の夫」(23日公開)。原田マハの原作小説を河合勇人監督(「かぐや様は告らせたい」シリーズ)が実写化した政治コメディーだが、日本の憲政史上初の女性首相が誕生するとの設定が話題を呼んでいる。
「興行的には同時期に『MINAMATA―ミナマタ』と『空白』という社会派作品が重なったため客足が分散。23日から4日間の成績は1億2000万円ほどとヒットとは言いにくい。それでも総裁選というタイミングは今後の興行に追い風でしょう」(映画ジャーナリスト・大高宏雄氏)
中谷美紀演が初の女性総理に就任
物語は中谷美紀演じる女性初の首相・相馬凛子とその年下夫・日和(田中圭)が主人公。
「新総理が女性かつ史上最年少という設定。美人ということもあって国民も熱狂的に支持します。連立与党の少数党の党首という点は現実と違いますが、若いころの高市氏が“飲みィのやりィのやりまくり”と自著に書き話題になっているように、女っぷりが注目をあびる点では共通しているといえなくもありません。国会の論戦シーンなどは、美術スタッフが綿密な考証をした非常に再現性の高いもので、まるで現実の女性首相を見ているような迫力があります」(映画批評家・前田有一氏)
初の女性首相の年下の夫、日和は、唯一興味がある鳥類の観察研究を生業にしていた草食男子だったが、妻が総理就任後は生活が一変。メディアに追われ、内閣広報官からはGPSで居場所を管理され、揚げ句の果てには政敵が仕掛けたハニートラップに引っかかってしまう。映画は日和が巻き込まれる、そんな激動の日々をコミカルに見せると同時に、凛子の苦闘と夫婦愛も描き出す。
「相馬凛子首相の政策で一番ぶっ飛んでるのは、国民の熱狂と高支持率を武器に、社会福祉の財源とするため消費税の再アップをぶちあげる点でしょう。映画の中では、痛み覚悟の改革派として英雄扱いですが、現実世界の新首相がその気にならないことを願いたい」(前田有一氏)
フィクションで年下夫を翻弄するだけなら可愛いものだが、現実で国民を振り回すのだけは勘弁だ。