五木ひろしの光と影<10>平尾昌晃は思いつめた顔の三谷謙に声をかけた
しかし、生前の平尾昌晃の見立ては少し異なる。
「彼はその時点で弾き語りをやっていたでしょう。主に新宿や赤坂で。洋子ちゃんは銀座でクラブ『姫』のママ。おそらく『姫』で歌いたかったんじゃないかな。『姫』にも時々、クラブ歌手が現れて生歌を聴かせたりしていたからさ。弾き語りも新宿と銀座じゃ収入が全然違うっていうから」(平尾昌晃)
ともあれ三谷謙は、その場にいない山口洋子に届けと言わんばかりに「噂の女」を、魂をぶつけるような迫力で歌い切った。 =つづく