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細田昌志ノンフィクション作家

1971年、岡山市生まれ、鳥取市育ち。CS放送「サムライTV」キャスターから放送作家としてラジオ、テレビの制作に携わり、ノンフィクション作家に。7月に「沢村忠に真空を飛ばせた男 昭和のプロモーター・野口修評伝」(新潮社)が、第43回講談社本田靖春ノンフィクション賞を受賞。

五木ひろしの光と影<10>平尾昌晃は思いつめた顔の三谷謙に声をかけた

公開日: 更新日:

「そのとき、なんとなく彼の目に“なんだ、今日のゲスト審査員は平尾昌晃か”っていうガッカリする感じが、ちょっとだけしたのよ」

 この「全日本歌謡選手権」は5人のレギュラー審査員(浜口庫之助、淡谷のり子、船村徹、竹中労、小池聰行)の他に、平尾昌晃、山口洋子、橋本淳からなるゲスト審査員が毎週1人ずつ出演するルーティンとなっていた。

 もっとも、出場者の関心は「淡谷先生にどんな嫌みを言われるだろう」とか「船村先生に厳しく言われなきゃいいけど」といったものがほとんどで、ゲスト審査員に関心を払う出場者は、おそらくいなかったはずだ。

「でも、彼は洋子ちゃんに審査員席にいてほしかったと思う」(平尾昌晃)

 筆者はその理由を拙著「沢村忠に真空を飛ばせた男」(新潮社)の中でこう書いた。

《本番が始まった。青年は内山田洋とクールファイブの『噂の女』を完璧に歌い上げた。山口洋子の作詞曲である。青年は審査員席にいると踏んだ山口洋子に向けて、この曲を選んだのかもしれなかった。出場者が審査員の歓心を得ようと、関係する楽曲を歌うのは珍しくなかったからだ。青年は、浜口庫之助ではなく、船村徹でもなく、淡谷のり子でもない、一番年若でまだ大物とは言い難い山口洋子に可能性を託そうとしたのだ。「頭の固い大御所におもねても、もはやこれっぽっちも得はない。それより、若き銀座マダムのセンスに賭けてみよう」ということだろう》

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