<153>早貴被告の「新宿で看護師の姉と同居」もウソだった
妹さんは大袈裟に驚いてみせたが、むろんウソであろうと私は内心思っていた。
「どこの事務所に入っているの?」
私が笑いながら聞いた。
「エージェントはいろいろと替わるので個人で動かないといけないんです」
「へえ、そうすると交渉もしなければならないからキミは英語も出来るんだね」
「まあ、そうですね」
シレッと言う。これも全くのウソで自分を大きく見せたいという見えから出ているのだろうと思ったが、黙っていた。早貴被告が私のことを苦手に思うのは、見透かされていると分かっていたからだろう。
彼女には情もなかった。ドン・ファンの死後、早貴被告が田辺に来る時の送り迎えはマコやんの役目だった。悪天候で飛行機の到着が白浜から関空に変更になった時も、マコやんは早貴被告に迎えに来るように頼まれたので、私と田辺の居酒屋で一緒に飲む予定は急きょキャンセルとなった。
「大変でしたね。でも帰りには、おいしいものを食べましたでしょ?」