(9)誕生日にタランティーノが家にやってきて「私の次回作に出てください」と
最初の1週間は彼女たちに刀を触らせなかった。刀とは何か。武士とは何か。そうした精神性を教えるところから始めたのである。もちろん、厳しい稽古も課した。武術の心得があるルーシーは上達が速かったが、ユマはかなり苦労した。
出産後3カ月だったから、コンディションづくりも大変だったし、手足が長く、腰位置が高いから殺陣がサマになるまでに時間がかかったのだ。それでも必死に稽古についてきた。
私が「どうしてそこまで頑張るんだ」と尋ねると、うれしい言葉が返ってきた。
「私のかけがえのない財産となるからです」
彼女たちのプロ根性もあり、一見荒唐無稽な「キル・ビル」には、日本映画が培ってきた殺陣の文化が見事に息づいている。(つづく)