(9)誕生日にタランティーノが家にやってきて「私の次回作に出てください」と
今やすっかり巨匠となったクエンティン・タランティーノに初めて会ったのは1990年代半ばである。私はロサンゼルスに活動の拠点を移しており、現地の寿司屋で会った。その雰囲気は映画監督というより映画青年という印象だった。
少年時代から私の熱狂的なファンであり、いつか一緒に仕事がしたいと熱く語っていたのだが、数年後、それが本当に実現した。
私の誕生日の夜だった。午前0時すぎにチャイムが鳴るので、誰だろうと玄関のドアを開けると、そこに立っていたのがクエンティンだった。ちょうどロサンゼルスの映画館で深作欣二特集をやっていて、深作監督と息子の健太が私の家に遊びに来ていた。
私へのプレゼントだと言ってワインを1本差し出したクエンティンをからかったのは深作監督だった。
「今日はサニー千葉の誕生日なんだぜ。ワイン1本は寂し過ぎるじゃないか」
「実は、サニーにはもっと大きなプレゼントを用意しました。私の次回作にぜひ出てください」