続く十三代目團十郎の襲名披露 12月の歌舞伎座には「3つの時間」が交差している
十三代目市川團十郎の襲名披露が続く今月の歌舞伎座は、3つの時間が交差している。
昼の部は、新之助が主役と言っていい。「毛抜」で、9歳にして、大人の役を演じている。なんとなく「名探偵コナン」を連想するが、ともかく、しっかりと演じている。
そして周囲の役者たちも、真剣に相手をするので、少年の無謀な冒険ではあるが、芝居として成り立つ。新之助にこの先、どういう未来が待っているのかは誰にも分からないが、ひとりの役者のこれから数十年の時間の始まりを目撃できる。
團十郎は昼の部では「京鹿子娘二人道成寺」で、最後の押し戻しに出るだけなので、舞台にいる時間は少ない。先月は「助六」で揚巻を演じた尾上菊之助と、中村勘九郎が白拍子花子を舞う。
最初の「鞘當」は、松本幸四郎と尾上松緑、そして日替わりで市川猿之助と市川中車。この2つは、團十郎と同世代の主要な役者が揃い、「いま」の歌舞伎座の顔見世ともいうべき趣向だ。
夜の部最初は口上で、市川一門だけが並び、菊之助、松緑、勘九郎、七之助など、他の一門の者は出ていない。團十郎が「市川一門」の宗家であることをアピールする形の口上となった。
次が團十郎の娘の市川ぼたんが舞踊劇「團十郎娘」を舞う。女性が歌舞伎座の舞台に、子役ではなく立つのは、60年前の十一代目團十郎襲名のときの、三代目市川翠扇以来という。市川家は、女たちも、それなりに芸を継承していることを示す。