「らんまん」志尊淳が健気に演じ“竹雄推し”急増中! 実在のモデル「和之助」波乱の後半生
しかし、岸屋は牧野の東京での植物研究を支えるために大金を送り続け、ついに経営が行き詰まってしまう。後を引き受けたのが和之助だ。地元史には井上和之助酒店として登場するが、それもほどなく人手に渡る。その後、佐川村の酒蔵の統合などを経て、現在の司牡丹酒造につながる。そう、のど越しの良さで人気の清酒「司牡丹」の製造元である。本社と工場はいまも高知・佐川町にあって、そこの作業場や酒蔵を参考に「らんまん」のセットも組まれた。ドラマの銘酒「峰乃月」は司牡丹ということかな。
酒造りをやめた和之助と猶はしばらく醤油店を営んでいたが、ほどなくして静岡・焼津に転居。ブリ漁の網元として成功したという。
「らんまん」はこれから万太郎の東京での研究者生活が始まるが、ここでも同行している竹雄の苦労は絶えない。膨大な植物標本を積んだ大八車を引いて下宿先を探し、研究のためと言ってはカネを湯水のように使う万太郎の生活費の足しにと、西洋料理店で給仕としても働き始める。
ところが、万太郎はのんきなもので、東京大学の研究室に向かう途中で寿恵子の店に寄ってはデレデレ。「牡丹の花が好き」と聞くと、ひたすら牡丹の植物画を描き続けるというありさまだ。あげくに、寿恵子が経済界の実力者に見初められたと聞いて体調を崩す。竹雄の心労絶えず。ひたすら「ちゃんと寝て、食べて、笑顔でいてくれること」を願うのだった。万太郎、竹雄の苦労を少しはわかってるか!
(コラムニスト・海原かみな)