著者のコラム一覧
松尾潔音楽プロデューサー

1968年、福岡県出身。早稲田大学卒。音楽プロデューサー、作詞家、作曲家。MISIA、宇多田ヒカルのデビューにブレーンとして参加。プロデューサー、ソングライターとして、平井堅、CHEMISTRY、SMAP、JUJUらを手がける。EXILE「Ti Amo」(作詞・作曲)で第50回日本レコード大賞「大賞」を受賞。2022年12月、「帰郷」(天童よしみ)で第55回日本作詩大賞受賞。

東京・新大久保「イスラム横丁」のネパール料理店でよみがえった、ざらり。

公開日: 更新日:

 そんな否定的な対応のすべてが不愉快だったし、邦楽業界に大きな失望も感じた。怒りにまかせて「臆病者たちは死ぬまで仲良しクラブでじゃれ合ってればいいんじゃないですか」と悪態をついたこともある。邦楽ジャーナリズムの空気を掴めなかったことは、その後ぼくが軸足を川上に……音楽制作に移す一因ともなった。

■辛口ライターに面会を申し込む

 30代になり、プロデューサーとしていくつかのミリオンヒットに関わる幸運に恵まれた。気づけば作品を評される側に立っていた。売り上げが増すほど賛辞も増えていく。たまに辛口の評を見かけると、自分と直に会ったことのないライターばかり。そのときぼくが取った行動は、そんな書き手にこちらから面会を申し込むということだった。一度会ってにこやかに接すればあら不思議、途端にライターの筆は甘くなる。本当は不思議でも何でもない。ぼくは酷評を封じたくてわざわざ「面識」を作ることに余念がなかったのだ。断じて言うが、圧力というほどのものではない。そんな力はぼくにはない。それなのに、彼らが口をつぐむたび、ぼくにはざらりとした感触が残った。

 日本語を解さぬ外国人客で溢れかえるイスラム横丁のネパール料理店で、仕事仲間があけすけに語る芸能事務所の闇を聞くぼくには、懐かしい感触がよみがえっていたのだった。ざらり。

最新の芸能記事

日刊ゲンダイDIGITALを読もう!

  • アクセスランキング

  • 週間

  1. 1

    火野正平さんが別れても不倫相手に恨まれなかったワケ 口説かれた女優が筆者に語った“納得の言動”

  2. 2

    中日1位・高橋宏斗 白米敷き詰めた2リットルタッパー弁当

  3. 3

    巨人今季3度目の同一カード3連敗…次第に強まる二岡ヘッドへの風当たり

  4. 4

    八村塁が突然の監督&バスケ協会批判「爆弾発言」の真意…ホーバスHCとは以前から不仲説も

  5. 5

    眞子さん渡米から4年目で小室圭さんと“電撃里帰り”濃厚? 弟・悠仁さまの成年式出席で懸念されること

  1. 6

    悠仁さま「学校選抜型推薦」合格発表は早ければ12月に…本命は東大か筑波大か、それとも?

  2. 7

    【独占告白】火野正平さんと不倫同棲6年 元祖バラドル小鹿みきさんが振り返る「11股伝説と女ったらしの極意」

  3. 8

    「天皇になられる方。誰かが注意しないと…」の声も出る悠仁さまの近況

  4. 9

    家族も困惑…阪神ドラ1大山悠輔を襲った“金本血縁”騒動

  5. 10

    無教養キムタクまたも露呈…ラジオで「故・西田敏行さんは虹の橋を渡った」と発言し物議