フリーアナ永井美奈子さん生涯の夢 「日本で一番敷居が低いクラシックコンサート」を目指して
ぴあの社長が「歴史に残る偉業だよ」と
コロナの自粛明けに「霞町音楽堂夏Fes.」略して「おんなつ」と名づけ、無観客、24時間で24組出演! ライブ中は感染対策を行って、1組40分で換気に20分。夜中は海外にいる方の演奏をVTR配信しました。
私は前日まで出演交渉を行い、台本書き、楽屋手配、当日は司会、カンペ出し、深夜のVTRコーナーも司会と大忙し。
でも、不具合も多くて!ネット配信が1度だけ止まってしまいましたし、お客さんも慣れてないから見る方法に戸惑ったり。チャットのメッセージも最初の方は「見方がわからない」とか。最後の方は「24時間までもう少し!」「がんばれ、あと1時間だ」と間寛平さんのマラソンの応援みたいになって、最後は視聴者の方と一緒にゴールした感じでした。
音楽家のみなさんは演奏後、「お疲れさま」ではなく、「ありがとう」と言って帰ってくれました。すごくうれしかったですし、「こういう時でも音楽をやめちゃいけない」と実感しました。
後日、少しだけ話題になり、キャスティングでお世話になった作曲家の三枝成彰さんは「よくやりきったね」と言ってくださり、チケットを販売していただいたぴあの社長さんからは「歴史に残る偉業だよ」と褒めてくださった。興行的には大赤字でしたけど。
それでも4年続けてきたことは自信になりました。やってみて、クラシックの音楽家は芸術肌で自分を語りたがらないので、司会の私がトークで音楽家の魅力を引き出せれば、お客さんも演奏をより楽しめるのではないかと思いました。普通のコンサートでは演奏の合間に半生を振り返る動画やトークコーナーを設けることはまったくやりませんからね。
■音大生や若者に場を提供する
クラシックコンサートに足を運ぶ日本人は少ないといわれますが、興味がある人は多いんです。とくに若い子たち。興味はあるけど、敷居が高くて聴きに行ったことはないという、そんな多くの若者にアプローチしたい。芸術をバラエティーにするのではなく、インタビューなどで音楽家を深掘りすることで、より音楽に興味を持ってもらう仕掛けも考えています。日本で一番敷居が低いクラシックコンサートを目指しています(笑)。
それと音大生や若者に場を提供すること。コロナ禍にコンクールも文化祭もない学生の応援も始めました。音大生はコンサートは入場無料、配信も無料でプレゼントしています。さらに、今年から音楽堂を無償で開放するコンサートシリーズ「ラパンアジル」を始めました。オーディションで3組と契約、その中に今、放送中のアニメ「青のオーケストラ」で演奏の吹き替えをしてる学生と大学院生が3人もいて! 主役の青野一役のバイオリニストもいました。高校生キャラの演奏はやはり若者がやるべきと納得するほど、音色が初々しい! 彼らには霞町音楽堂に出てもらいました。今後は若者の応援をもっと大きくしたい。
日テレ学院では去年からアナウンサー志望の人たちに教えています。これからもアナウンサーでもクラシックでも若者の育成に携わっていきたいですね。
(聞き手=松野大介)
▽永井美奈子(ながい・みなこ) 1965年6月、東京都出身。88年に日本テレビ入社。96年に退社し、フリーに。母校である成城大学で非常勤講師を長年務める。