93歳「現役日本最高齢の大道芸人」ギリヤーク尼ヶ崎はなぜ路上に立ち続けるのか
「あと7年、100歳まで」
この日、公演の前に控室を訪ねると、車椅子に座るギリヤークさんの細くなった脛をスタッフが丹念にさすっていた。脊柱管狭窄症で血の巡りが悪いのか両足が足首あたりから黒ずみ、痺れと冷えがつらそうだった。
「はじめは80歳までは踊りたいと言っていたけど、88歳に、90歳になって今93歳。今日も来年も頑張りましょう!」とスタッフは勇気づける。別のスタッフは「あと7年、100歳まで!」と声かけし開演に向け気分を高めていた。
そんなギリヤークさんの日常を聞くと、フルーツが好きで特に桃が大好き。北海道公演ではメロンのような味がする「アジウリを買ってきて欲しい」と決まって言うそうだ(ギリヤークさんの実弟さんの話)。老人を演じるために歯を全て抜き総入れ歯にしているギリヤークさんにとって、フルーツは糖度もありミネラルも豊富、消化もいいだろう。
また、和菓子屋の次男のギリヤークさんはあんこ菓子を好んで食べるそうだ。
控室で「93歳で踊るエネルギー、長生きの秘訣は何か?」と聞いた。ギリヤークさんもスタッフも何も言わなかったけれど、公演の中で、念仏を唱えるような小さな声で話す合間に、ハッキリと強くギリヤークさんは言った。
「やりたいことがあるんです」