【新春異色対談】松尾潔×今井絵理子 #3「政治家になるきっかけを与えてくれた私の息子は、もう19歳。プロレスラーになったんですよ!」

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エンタメは国の毛細血管

松尾「政治や経済が国の大動脈、大静脈だとしたら、エンタメは毛細血管みたいなものだからね。でも、毛細血管が血栓で塞がれた動物は、しなやかな動きができなくなる。それと同じで、エンタメに元気がないと潤いのない国になっちゃうんだよ」

今井「韓国のように国策でエンタメに力を入れている国は世界で結果を出してますからね」

松尾「だからこそ、芸能の現場をよく知るエリちゃんに期待してる」

今井「そういえば、政治家になるきっかけを与えてくれた私の息子は、もう19歳。プロレスラーになったんですよ!」

松尾「知ってる! そのニュースにはとても驚いたもん。歌声で人を感動させてきたエリちゃんの待望のお子さんが聴覚障がいなんて、神様は何を考えてんのって。プロレスラーになったと聞いてもっとビックリ。息子さんは幼い頃から体を動かすのが好きだったの?」

今井「いえ、生まれつき三半規管が弱くてバランスが悪かったので、歩き出すのも遅かったくらい。体育の授業の様子を見ても、『この子は運動が苦手なんだな』と思っていました。家でもゲームばかりしていましたから。でも、熱中していたそのゲームがなんとプロレスのゲームで。私が議員になってしばらく経った頃、障がい者支援などの社会貢献をしているプロレス団体HEAT-UPさんとご縁をいただきまして。お話を伺うと、この団体では現役の選手がプロレスを通じて体づくりを指導するクラスがあるらしく、息子にも楽しく体を動かすことを覚えてほしいと思い、勧めてみたらのめり込んで……気が付いたらゲームじゃなくて本物のレスラーになってました」

松尾「そんな突進力はお母さん譲り?」

今井「どうなんですかね(笑)。耳が聞こえる人は日々、『無理』『できない』といったネガティブなワードが無意識のうちに耳に入ってきます。私たちは、そういったネガティブなワードに影響されがちなんですが、息子にはそういう雑音が入ってきません。そのぶん、ポジティブ思考で自分のやりたいことに向かって真っすぐに突き進めるのかなと。息子の背中を見ていて思うことは、『障がい者だからできない』というのは勝手な先入観でしかない。人間の可能性って無限大であることを教えられました。現在私の事務所では耳が聞こえない方を秘書として採用し、共に活動をしています。やりがいを持って、テキパキと精度の高い仕事をこなしてくれており、とても心強い存在です。一億総活躍社会の実現には障がいのある方たちの力も必要不可欠です。そのためにもまずは、私たちの意識や考え方を変えなくてはいけないと痛感します」

松尾「誰もが相互に助け合う、そういう社会に近づけたいんだね。エリちゃんは、自分の特質が生かせるところと、世の中から求められるものの良き接点を見つけて、今ここにいるんだってことがよくわかった。すてきな大人になりましたね。かつての“家庭教師”としてはホッとしましたよ(笑)」

今井「SPEEDでみなさんに応援していただいたことを忘れず、ぶれずにがんばっていきたいと思っています」 =おわり

(取材協力=新宿「風花」)

▽今井絵理子(いまい・えりこ) 1983年、沖縄県出身。96年にSPEEDのメンバーとしてデビュー。2000年に解散後はソロ活動開始。04年に長男を出産。08年に息子の聴覚障害を24時間テレビで公表。16年、第24回参議院選挙に自民党公認で全国比例区から立候補し初当選。現在2期目。

▽松尾潔(まつお・きよし) 1968年、福岡県出身。早大卒。音楽プロデューサー、作詞家、作曲家。MISIA、宇多田ヒカルのデビューにブレーンとして参加。プロデューサー、ソングライターとして、平井堅、CHEMISTRY、SMAP、JUJUらを手がける。EXILE「Ti Amo」(作詞・作曲)で第50回日本レコード大賞「大賞」を受賞。本紙でコラム「松尾潔のメロウな木曜日」(木曜掲載)を連載中。新著「おれの歌を止めるな」(講談社)が1月11日に発売。

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