『連獅子』で長三郎が登場したときの拍手の大きさは「歌舞伎座が揺れた」と感じたほど
福岡の博多座では松本幸四郎と市川染五郎による、江戸川乱歩の『人間豹』を原作とした『江戸宵闇妖鉤爪』。白鸚・幸四郎で初演されたものを、それぞれの子が継ぐ形になった。これは行けなかったので、東京でも上演してほしい。
■新橋演舞場で市川團子と中村隼人が交互に主役
東京では、新橋演舞場で『ヤマトタケル』で、市川團子と中村隼人が交互に主役。歌舞伎座では18代目中村勘三郎の十三回忌追善。孫の勘太郎は身長も大人の俳優と変わらない高さ。舞踊も立派。もう子役ではない。勘九郎と長三郎の『連獅子』での、長三郎が登場したときの拍手の大きさは、まさに「歌舞伎座が揺れた」感じ。それに応えてしっかり演じていた。18代目の部屋子だった中村鶴松が『新版歌祭文・野崎村』でお光に大抜擢されているのも注目。
圧巻は勘九郎と七之助の『籠釣瓶花街酔醒』。父.18代目と玉三郎の舞台がいまも忘れられないファンが多いはずだが、その重圧のなか、継ぐべきものは継ぎ、新たな解釈も加えている。ラストは、18代目よりも凄みがあり、その狂気には拍手を忘れるほどだ。
今月は御園座では團十郎、大阪松竹座では壱太郎、博多座では幸四郎・染五郎、新橋演舞場では團子、歌舞伎座では勘九郎・七之助が、それぞれ父や祖父の当たり役を演じた。20年、30年後に、伝説となっている月かもしれない。 (作家・中川右介)