大谷翔平の「悲劇」は笠置シヅ子、矢沢永吉も経験…超大物こそ“側近”に裏切られてしまうワケ
矢沢永吉は英語堪能なコーディネーターを信頼して35億円の横領被害に
最も巨額の横領被害に遭ったのは、矢沢永吉だろう。ロック界を牽引する彼は世界進出を目指し、1980年代後半にオーストラリアにレコーディングスタジオなどの入る高層ビルを建設しようと計画した。
「矢沢はそのための法人を作った。当時、豪州の法律では取締役を2人以上置く必要があり、そのうちの一人は豪州在住が条件だった。矢沢は信頼を置く英語堪能なコーディネーターを現地の責任者にしたんです。その男が矢沢の事務所の経理担当と共謀し、約35億円を横領した。2人は矢沢に無断でビル建設予定地を担保に銀行から借金をして、ゴルフ場開発などの不動産事業に投資して失敗し、借金が膨れ上がりました。現地の責任者は矢沢に気付かれないように、精巧な書類を作っていた。矢沢は騙されてサインしていたから、借金を被る羽目になった。1998年に事件が発覚し、2人は逮捕されています」(前出・芸能関係者)
これはオーストラリアでも巨額の詐欺事件で、現地在住の取締役が必要という法律が改正されたほどだった。矢沢は被害者にもかかわらず、約35億円を自力で返済した。
「横領事件の共通点は“個人事務所”です。昨今は大手事務所から独立するタレントが多くなっている。ネット上では大手事務所を“悪”と考える風潮もありますが、それは個人事務所の盲点に気付いてないからでしょう。個人事務所はスタッフが少ないため、悪さをしても明らかになりづらい。1人に権力が集中することが問題です」(前出・芸能記者)
大手から独立して個人事務所を立ち上げると、同じマネジャーが何十年も付くという例は珍しくない。すると、その“側近”を監視する人がいない状態に陥る。
「仕事相手に『ギャラ100万円じゃなければやらない』と交渉しながら、タレント本人には『今回のギャラは50万円です』と少なめに申告し、その差額を自分の金にしたマネジャーもいた。この手法を使ったのは、1970年代から1980年代前半に矢沢永吉のマネジャーを務めた人物です。矢沢がソロになって売れまくっていた頃、イベンターにそう吹っかけていた。永ちゃんの側近として雑誌などに取材されることもあったし、ファンにも今回の大谷翔平と水原一平のような蜜月関係と思われていた。横領した男は今も音楽業界にいるんですよ。面の皮が厚いというか何というか…」(前出・芸能記者)
疑問を抱いたイベンターから矢沢宛に手紙が届き、横領が発覚したものの、それがなければ永遠に着服行為が続いていたかもしれない。
「大手事務所ならマネジャーは一定の期間で代わります。大御所になると、ずっと同じ人の場合もありますが、何か問題を起こせば、交代できる環境にある。でも、個人事務所ではそうはいかない。有名タレントのマネジャーという職業は一種の"権力"です。同じ人がずっと実権を握ると、必ずと言っていいほど腐敗する。今まで公になっただけでも、何名もの芸能人が側近に裏切られている。明るみになっていない被害が数十件あっても、おかしくない」(前出・芸能関係者)
1人に権力が集中する危険性は、政治もスポーツも芸能も変わらない。