「やっぱり本物のジョイスさんがいいね」に安堵したビルボードライブ東京の夜
90年代生まれのジョイスが初めて夢中になったアーティストは、今春のスーパーボウル・ハーフタイムショウでの千両役者ぶりも記憶に新しいアッシャー。と書きつつ、どれだけの読者にご理解いただけるか心もとないが、アメリカR&Bシーンの頂点であり、マイケル・ジャクソン~マーヴィン・ゲイ的存在です。ジョイスが人生で最初に手に入れたCDは、そんなアッシャーの2001年の『8701』だそう。同作収録のグラミー賞受賞曲「U Remind Me」の日本リミックスを手掛けていたぼくとしては、それだけでもジョイスとの音楽的な縁を感じずにはいられない。だから、今回の再来日公演にあたり彼女からコラボを持ちかけられてもさほど驚かなかった。ついにその時が来たかという感慨のほうが大きかった。
こうして、2016年に初めてラジオでかけた彼女の曲「Do You Love Me」の日本語詞バージョンを作ることに。原曲の英語詞を細かく分析してすべての母音を拾うところから始めるのがぼくの訳詞法。英語の音韻だからこそ生まれたグルーブを、日本語でいかに再現できるかが腕の見せどころ。これを書きあげたら、ジョイスからネットで送ってもらったカラオケに仮歌をのせて返送する。ほんの数年前までは〈仮歌さん〉選びに結構な時間を費やすのが当たり前だったが、今ぼくはもっぱら歌声合成ソフトウェア頼みである。人間らしくリアルな声での歌唱が可能な、最新のAI技術で開発されたソフトに「歌わせる」のだ。驚く方もいるだろうが、日本の音楽制作者の間で最早このやり方は珍しくもない。