石川さゆりさん 恩師の作詞家に尋ねた「天城越え」の背景
■「先生が浮気をした時の歌ですか?」
「天城越え」は「好きに歌って」と言われましたが、私にはまったくわからない世界。「先生が浮気をした時の歌ですか」とうかがったら、「違うよ」と。子供の頃、同じ長屋に住んでいたご夫婦がいて奥さんがダンナさんの浮気相手の女性に怒鳴り込みに行く時、なぜか自分の息子じゃなく吉岡さんの手を引いて乗り込んでいったんですって。その修羅場を見た経験がもとになっているそうです。
いろいろな話をしましたね。
ご自宅にうかがったり一緒に焼き鳥屋さんに行ったり。そのうちわがままをいっぱい聞いていただくようになって。「バナナの叩き売りをステージで歌いたい」「浪曲でエンターテインメントを」なんて。そう言うと「あなたはいつもむちゃくちゃなことを言う」と言いながらもいろいろ調べて書いてくださるんです。
“作り話大会”をしてできた曲もあります。「紫陽花ばなし」という歌に出てきた、港で小さな居酒屋をやってた女の人はどこに行っちゃったんでしょうねと聞くと「あの女の人はね……」なんて言いながらできたのが「居酒屋『花いちもんめ』」です。詞ができると、紙に手書きで清書して渡してくださいました。