石川さゆりさん 恩師の作詞家に尋ねた「天城越え」の背景
97年に大きなプロダクションを離れ、自分の個人事務所をスタートした時、いろいろな困難がありました。離れていく人もたくさんいました。そんな時も吉岡さんは変わることなくずっと歌を提供し続けてくれました。大変な時もそばにいてくれる身内、肉親のよう。吉岡さんは私が吉岡さんの歌の世界を一番よく表現してくれるんだとおっしゃっていたそうです。
■「最後にこれをあげる」と手渡ししてくれた詞
そんな吉岡さんが07年に病気になられて「もうボクじゃなくて他の人に書いてもらった方がいいよ」とおっしゃったんです。でも「まだまだ先生のスネをいっぱいかじるんだ」とずっと甘えていました。
亡くなる直前、「もう本当に書けない。最後にこれをあげる。歌っても歌わなくてもいいからね」と言って手渡ししてくださったのが「もういいかい」という詞。アルバムに収録させていただきました。亡くなる前日の夕方。病院からお電話くださって「もうこんなに声が出なくなったよ」「声は私が出しますから!」そんな会話を交わしたのが最後でしたね。