抗がん剤治療で数カ月長生きすることに意味があるのか?
しかし、今は違います。新しい治療薬が開発され、体のつらさを取る緩和医療も発達しました。確かに、今の抗がん剤治療では手術不能な膵臓がんは治せません。
でも、この場合の「延命」とは、意識のない状態での延命とは違うのです。体が良い状態を保ちながら、治療で良くなって「生きている実感がある」と話される患者さんがたくさんいらっしゃいます。治療を受けないで死を待つような気持ちでいるよりも、ずっといいと思うのです。
日本では、多くの方は宗教の信仰がありません。それでいて、科学的根拠に基づいた治療法があるのにそれを拒否して、短い余命を告げられ、死に向かってどう生きていこうというのでしょうか? 生きていてこそ、幸せを感じるチャンスがあるのです。
場合によっては、まずは治療をやってみて、副作用などがつらくて無理だと思うようなら、そこでやめればいいのです。一度も治療を受けずに死んでしまうのは、本当にもったいない。
医学の発達は明らかです。1年生きた後、そこに死があるのではなく、さらにまた余命1年を伝えられる、あるいは新薬でもっと生きられる――そのような時代なのです。生きていてこそ人生です。