幸福感に与える影響力は「所得」よりも「自己決定」の方が大きい
例えば、今から取りかかろうとしていたのに、「早く仕事をしなさい」などと上司から言われ、やる気を奪われた……。そんな経験を持つ人は多いのではないでしょうか? 人間は、生来的に自分の行動や選択を自分で決めたいという欲求が備わっています。しかし、それを強制されたり奪われたりすると、自分にとってプラスの提案であっても無意識に反発的な行動を取ってしまいます。こういった現象を、心理的リアクタンスと呼びます。
料理を作っているときに、横から「もうちょっと塩コショウを入れたほうがいい」とか「ゆで過ぎじゃない?」などと言われると、料理を作りたくなくなるのも心理的リアクタンスによるものです。対照的に、自分一人で好きなように作ると、たとえ味が微妙であっても「私って料理上手かも!」という具合に、達成感や満足感が得られやすい。まさに心理的リアクタンスと自己決定の違いです。裏を返せば、心理的リアクタンスが起こる前に、「自分でこのチョイスをしたんだ」と考えられれば幸福度を上げることができるのです。
運ばれてきた料理を見て、「想像していたのとは違う」と思って食べるよりも、「想像していなかった料理が来たけど、私はこれと巡り合うためにチョイスしたんだろうな」と思って食べた方が、幸福度は雲泥の差となります。