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田中幾太郎ジャーナリスト

1958年、東京都生まれ。「週刊現代」記者を経てフリー。医療問題企業経営などにつ いて月刊誌や日刊ゲンダイに執筆。著書に「慶應幼稚舎の秘密」(ベスト新書)、 「慶應三田会の人脈と実力」(宝島新書)「三菱財閥 最強の秘密」(同)など。 日刊ゲンダイDIGITALで連載「名門校のトリビア」を書籍化した「名門校の真実」が好評発売中。

開成が東大合格者数トップを死守できるのは高校受験組「新高生」のおかげ?

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「開成が東大入試でトップを走り続けているのは高校からも生徒を採っていることが大きい」と話すのは同校の元教師だ。2月1日の中学(定員300人)に続き、高校(定員100人)の入試が10日に行われた。555人が受験し、合格者は189人、倍率は2.9倍だった。

 現在、麻布など名門私立校の大半が高校入試を行わない完全中高一貫。「新女子御三家」として注目を集める豊島岡女子学園も一昨年を最後に高校からの生徒募集をとりやめた。「中高6年間を通したほうが授業のカリキュラムが組みやすい」(同校関係者)というのがその理由だ。

 それは開成も同じ。中学のカリキュラムが進んでいるために、高校から入学した生徒(「新高」と呼ぶ)については別クラス(50人×2クラス)を設けなければならない。2年次から中学からの生徒(旧高)と合流する。学校運営はたいへんだが、「高校から新しい血が入るのは、旧高にとっても刺激になる」と元教師はそのメリットを挙げる。

 元々は開成も麻布と同じく、完全中高一貫だった。高校入試をスタートしたのは1960年。当時の募集定員は50人。それ以前から名門校として名が知られた存在だったが、現在のような超進学校ではなかった。高校募集の効果が表れ始め、東大合格者数上位校の常連となるのは60年代半ば。68年以降はトップ10を外していない。

どちらにとってもウィンウィンの関係

 74年、高校の募集定員を倍の100人に増やすと、さらに躍進する。彼らが卒業する77年、初めて東大合格者数首位を獲得。82年からは昨年まで41期連続で首位を死守している。

「開成が高校からの定員を増やしたのは、67年の学校群制度導入と無縁ではない。学校間格差をなくそうとしたこの制度で、都立上位高が一気に凋落。定員増員は都立高受験を経て一流大学を目指そうとしていた生徒たちの受け皿の役割を果たす目的もあった」(元教師)

 それは生徒にとっても学校にとってもウィンウィンの結果をもたらした。60年代、日比谷、西、戸山、新宿などが東大合格者数上位を独占。こうした名門都立高を目指していた受験生が行き場を失い、開成高に流れてきたのだ。都立とは比較にならないが、当時の開成の学費は私立校の中では圧倒的に安かった。一方、学校にとっての最大のメリットは優秀な生徒を確保できたことだ。

「飛び抜けて地頭がいい生徒が多く、カリキュラムで先行する旧高にすぐに追いつく。1年後に合流して混合のクラスになる頃には、新高の成績が上回っているケースも少なくありません。その傾向は今も変わらない」

 開成を76年に卒業した岸田文雄首相は高校募集50人時代の最後の新高。この元教師の話からすると、相当に頭が切れるはずだが、一向にその気配はない。いつまで「能ある鷹は爪を隠す」のだろうか。



◆田中幾太郎の著書「名門校の真実」」(1540円)日刊現代から好評発売中!

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