高級腕時計店で万引か…疑いの目で客を監視したら女性店員から「あっち向いてて」と怒られた
だが、ときには勘違いもある。こんなことがあった。若い2人連れの男性客がふらりと来店し、腕時計の陳列ケースを見始めた。例の矢島さんは次々とガラスケースから商品を取り出して客に見せ、説明をする。
このとき気になる現象が起きた。腕時計4本をケースの上に出したまま矢島さんがその場を離れたのだ。その際、彼女は「万引されないよう見といて」というふうにチラリとこちらを見た。
すると間髪入れず、新たに2人連れの男性客が来店し、迷うことなく腕時計コーナーに近づいて商品を見始めた。高級腕時計が放置された場所に4人の男性客が立っている。
ふと思った。「これは組織的な万引ではないか」と。以前、中国人の女性から「新品のロレックスが欲しかったら、10万円で調達してあげます」と持ち掛けられたことがある。彼女は手口も教えてくれた。中国人の窃盗グループが観光客を装って商品を見学。一人が店員の注意をそらしている隙に仲間が商品を奪っていくという話だった。
もしかしたら目の前で腕時計を物色している2組(4人)の男たちはグルの窃盗団かもしれない──。そんな疑いの目で監視しているうちに4人とも何も買わずに店から出ていった。彼らを見送ったあと、矢島さんが目を吊り上げて私を振り返り、腕時計売り場と正反対の方向を指さしてこう言った。