和田秀樹
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和田秀樹精神科医

1960年6月、大阪府出身。85年に東京大学医学部を卒業。精神科医。東大病院精神神経科助手、米カール・メニンガー精神医学校国際フェローを経て、現在、和田秀樹こころと体のクリニック院長。著書多数。「80歳の壁」(幻冬舎、税込み990円)は現在、50万部のベストセラーに。最新刊「70歳の正解」(同)も好評発売中。

笑顔で最期を迎える…大切なのはおカネより「思い出」なのです

公開日: 更新日:

 私は、親を介護した子供や、家業や工房などを継ぐ子供、そして国民の生活を支える農林水産業に従事する人などには財産を継承させてもいいけれど、それ以外の人には遺産を継がせず相続税を100%にすればいい──。かねてそう主張しています。

 日本の個人金融資産は2000兆円を超え、そのうち60歳以上が保有するのは全体の6割超。1200兆円を超えています。

 そんな状況で、冒頭のような税制になれば、多くの人は「税金を徴収されるよりマシ」と考えるでしょうから、消費に回すはずですので、日本経済へのカンフル剤になることは間違いありません。相続税の税収が増えれば、消費税を減税する原資にすることにもなり、若い世代の負担が減り、若い世代の高齢者への反発も減るでしょう。

 この生活をするメリットは、経済や財政などだけではありません。高齢者一人一人の生活の充実が一番です。

 実は、高齢者を専門とする精神科医として毎年100人くらいの高齢者を診察していると、「もっと楽しんでおけばよかった」「あのときケチケチせずにおカネを使っておけば……」などと本人や家族から後悔の言葉を耳にすることが少なからずあります。

 高齢者が貯めたおカネを子供に残すのではなくて、元気なうちに使うようになれば、人生の晩年に後悔することはないでしょう。楽しい思い出がたくさんできているはずです。

 自分やパートナーと一緒に貯めたおカネですから、使い道はなんでも構いません。豪華客船で世界クルーズの旅に出るのもいいですし、静かに温泉旅行を楽しむのもいいでしょう。観劇や舞台を見に行くのもよいと思います。

 少しずつ体が思うように動かなくなって、ベッドで過ごすことが多くなったとき、心の支えになるのは、「あのとき楽しかったな」という思い出です。たくさんの高齢者を診てきた経験から言えるのは、思い出に恵まれた人の方が、幸せな最期を迎えられる可能性が高いと思います。

 おカネがたくさんあって、「海外に行きたい」「温泉につかりたい」などと思っても、要介護状態ではかなえることが難しい。もちろん、要介護状態でもかなえられることはありますが、それが限られるのは事実。多くの思い出は、元気なうちでないとつくれません。笑顔で最期を迎えられる人は、おカネ持ちではなく、思い出に恵まれている人なのです。

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