ストレスが限界! 高級ブティックのドアマンの仕事は「ナチの拷問」だった
警備員編
「人生で一番つらい仕事だよ」──。ブティックのドアマン警備員をやって、知人から仕事内容を聞かれるたびにこう答えた。大学時代に20種類近いバイトを経験したが、これほど心身が疲弊するものはなかった。
何がつらいのか──?
一言で表現すると「何もしなくていいから」。突き詰めて言えば「何もしてはいけない」ということである。ドアマン警備員は両手をへその下で組み、所定の位置に立っているだけ。たまに来客があると「いらっしゃいませ」と声をかけるが、来客は1時間に3、4組だ。それ以外はひたすら黙って立っている。それも背筋を伸ばした直立不動の姿勢が求められる。ドアの開閉もない。
これがつらい。足が疲れる。実は私は扁平足。そのため歩いているのはあまり疲れないが、立ちづめだと足首から下にムズムズするような疲労感が広がるのだ。半径50センチなら動いていいと言われたが、それくらいでこの不快感は克服できない。
尿意もないのに「トイレに行きます」と断ってその場を離れることも再三あった。駅のトイレが往復10分と遠いおかげで足腰の運動になる。店に戻るときは「行くぞ」と気合を入れる。悲壮というしかない。ナチの拷問に、狭い空間に人を立たせて何日間も放置する方法があったと何かの本で読んだことを思い出した。