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内田正治タクシードライバー

1951年埼玉県生まれ。大学卒業後、家業の日用品、雑貨の卸会社の専務に。しかし、50歳のときに会社は倒産。妻とも離婚。両親を養うためにタクシードライバーに。1日300キロ走行の日々がはじまった。「タクシードライバーぐるぐる日記」(三五館シンシャ)がベストセラーに。

(34)無言が喜ばれたり、言葉足らずで怒られたり…お客との「会話の呼吸」は本当に難しい

公開日: 更新日:

「言葉足らず」がトラブルを招いたこともある。ある日の昼過ぎ。秋葉原から2人の女性客を乗せた。「ためいけ」というので「ためいけの交差点ですか?」と聞いた。たが返事がない。私は“YES”と理解した。私は“溜池(港区赤坂1丁目)”の交差点でお客を降ろした。

 その後、クルマを流していると営業所から無線が届いた。「昼過ぎに乗せたお客さんから知らない場所で降ろされたとクレームがきている。指示する場所に行って返金しろ」との命令だ。指定場所に急ぎ、指示通りに返金した。なんと指示されたのは日本橋の老舗洋食屋「たいめいけん」だった。「せめて日本橋と言ってくれたら」とも感じたが、私のミスであることは間違いない。

 以来、“溜池”行きのお客だけには、「港区ですね」と確認するようになった。言葉は過ぎても、足らなくてもダメなのだと知った。

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