「超音波装置」で割高手術に誘導? 飼い主を誤解させる手術のPRフレーズ
新しい治療法や薬、医療機器が開発されると、期待して新しい方をチョイスしたくなるかもしれません。ヒトもそうでしょうし、飼い主さんが愛犬や愛猫を託すときもそうでしょう。その気持ちは分からなくもありませんが、動物のケースについて注意すべきポイントを紹介します。
「体に糸を残さず、時間を短縮して効率的に手術を行います」
動物病院のHPやパンフレットなどには、手術の安全性をアピールしてこんなことが書かれています。この技術を可能にした医療機器が、超音波凝固切開装置です。超音波熱による摩擦で血管の端を接着し、切開ができる装置で、縫合の糸を使わず、手術時間を大幅に短縮して安全性も高いので、この表現そのものはウソではありません。
しかし、ほかの表現が重なると、飼い主さんが誤解する可能性が高まるのです。その一文が、
「避妊や去勢をはじめすべての手術を超音波装置を使うことが可能ですからご相談ください」
というものです。医学的な知識のない飼い主さんが2つの文を読むと、すべての手術で縫合糸を使わなくて済むと思うかもしれません。そして、「安全な装置ならわが子の手術もこの装置で」という思いになると思いますが、手術によっては糸での縫合が必要ですし、そもそもすべての手術に必要な装置ではないのです。