後ろ向き経営の三越伊勢丹にコロナ禍が容赦なく追い打ち
■多角化で社員が疲弊
だが、新規事業への急ピッチでの取り組みを求められ、社員たちは心身ともに疲労。不満が限界点を越え、労働組合は石塚邦雄会長(当時)に直談判した。これでは会社組織がもたないと判断した石塚氏は大西氏に辞任を迫り、その後釜に杉江氏を据えたのだった。
杉江氏は社長に就くと、大西氏による新規事業を次々に凍結。一方、百貨店事業の見直しも進めた。
「杉江さんは本業がなおざりになっていたと大西さんを批判していたのに、フタを開けてみれば、その路線を踏襲しただけだった。不採算の地方店をどんどん閉鎖していき、百貨店事業はますます縮小。その一方で早期退職制度をより強化したんです」
今や、こうしたリストラ策に反発する社員も減っている。早期退職制度は大幅増額が効を奏し、応じる社員が増えているのだという。
こうして見ていくと、杉江社長体制のもとでは、前向きな方針がほとんど打ち出されなかったことがわかる。ただ、前出の中堅社員は杉江社長の功績もあると反論する。