給与のデジタル払い 解禁から間もなく1年も導入進まず…いまだに申請事業者は4社だけ?
しかし、「デジタルマネーの事業者が経営破綻した場合に給与などの支払いが滞る恐れがある」「マネーロンダリングに悪用される懸念も残る」など数々の問題点が銀行界などから指摘された。
このためサービスを提供する資金移動業者は金融庁に登録した上で、厚労相の指定を受けることを義務付け、かつ指定を受ける資金移動業者は、財産的基礎を有するかを個別に審査される。
さらに新たに口座残高上限額を100万円以下に設定している資金移動業者に限定することや、破綻時に口座残高全額をすみやかに労働者に保証する(保証機関と契約)ことなどの要件が加わった。また、月1回は手数料なくATMなどで換金できることも条件となる。これら労働者の保護を目的とした制度面の制約やコスト増もあり、参入する資金移動業者の多くは二の足を踏んでいるのだ。
また、デジタルマネーで支払われる給与は、犯罪者にとっては格好の標的となる可能性もある。20年に発生したドコモ口座を介した銀行預金の不正流出問題に類似したシステムの抜け穴を突いた犯罪も起こる可能性は捨てきれない。「スマホのウォレットから知らないうちに給与が引き出されていた」といった事態にならないよう万全の措置を講じなければならない。審査が長引くのも無理もないことか。