著者のコラム一覧
小沢コージ自動車ジャーナリスト

雑誌、web、ラジオ、テレビなどで活躍中の自動車ジャーナリスト。『NAVI』編集部で鍛え、『SPA!』で育ち、現在『ベストカー』『webCG』『日経電子版』『週刊プレイボーイ』『CAR SENSOR EDGE』『MONOMAX』『carview』など連載多数。TBSラジオ『週刊自動車批評 小沢コージのカーグルメ』パーソナリティー。著書に『クルマ界のすごい12人』(新潮新書)、『車の運転が怖い人のためのドライブ上達読本』(宝島社)、『つながる心 ひとりじゃない、チームだから戦えた 27人のトビウオジャパン』(集英社)など。愛車はBMWミニとホンダN-BOXと、一時ロールスロイス。趣味はサッカーとスキーとテニス。横浜市出身。

宇宙用ステンレスで作られた衝撃のEVピックアップ「テスラ サイバートラック」のあり得ない存在感

公開日: 更新日:

テスラ サイバートラック

2月半ばにニッポン初上陸、全国を回ってる衝撃の新テスラEV、サイバートラックに触れてきた。

 今や世界最大のEVメーカーとなった北米テスラの次世代バッテリーEVで、カテゴリーは“一応”ピックアップトラック。トヨタで言えばハイラックス、三菱で言えばトライトンのような4~5人乗りキャビンに荷台が付いた多目的トラックだ。鳴り物入りでネット発表され、世界受注は170万台とも200万台弱とも言われる異様な人気っぷり。昨年末にようやっと北米で納車が始まったばかりだが、日本販売はまだ未定。

 それもそのはず、デザインから骨格からそのロボコップのような存在感があり得ないのだ。

 サイズはとにかくデカい。全長5.6m強×全幅2.2m強×全高1.79mの巨大ボディはアメリカならOKでも、日本じゃ手に余る。立体駐車場はもちろん、大抵のコインパーキングからハミ出す。車重も大量電池もあって3トン前後。

モノサシと三角定規を組み合わせたかのような超幾何学デザイン

 何よりSF映画から飛び出たような超幾何学デザインがあり得ない。間近で見ると「マジか?」と思うカタチで、モノサシと三角定規を組み合わせたかのよう。そして表皮は鉄板ではなくテスラ特製のウルトラハードステンレススチールエクソスケルトンで聞けばスペースXなど航空宇宙用に使われる耐腐食素材だとか。これが「無塗装」「チッピング(傷)なし」をうたっており表面は明らかに硬い。

 そして現物を見て驚いたがステンレスはおそらく直線に折り曲げるのが精一杯。マトモなプレスはできそうにない硬さで、もしや「曲線美」を狙わなかったのではなく狙えなかったのかもしれない。

 事実ボディコーナーはプレス曲面ではなくステンレス鋼むき出し。ボディの硬さといい、尖ったエッジといい、このままでは日本の車両法の突起物規制や歩行者保護法規をクリアできそうにない。ボディサイドのウィンカーもなく、日本に入れるためにはライト類改良や歩行者用エアバッグなどの導入がいるだろう。

 一方セミダブルベッドほどのサイズの荷台は全面樹脂で覆われ傷に強そうで、なによりスイッチ1つで電動樹脂カバーで覆えるのが凄い。

モノ作りの姿勢はまさに宇宙工学レベル

 室内も当然ユニークで、ステアリングは完全にフライバイワイヤー(メカ的にタイヤ支持部と繋がってない)方式。握りはヨーク式という上下がフラットになったもので、ほとんどゲームさながらだし、センターにはデカい18.5インチのタッチスクリーン、リアにも9.4インチのタッチスクリーンがつき、中のインターフェイスもまた新しくなった。

 運転席前のレバーやスイッチはさらに減り、タッチスクリーンが中心になり、操作のスマホ化はますます進んだ模様。そしてもちろん、現状日本ではナンバーが取れないので最速グレード、サイバービーストが持つトリプルモーターで時速0-100km加速が最速2.7秒という驚速ぶりも試せなかった。

 しかし安全や耐久性に対する考えの違いはあれど、デザイン、質感、走り、モノ作りの姿勢はまさに宇宙工学レベルであり、1度は乗ってみたい。実際に触ってみてつくづく既存車とは別物であり、テスラのモデル3やモデルYとも違うことがわかった。

 今後本当の意味で日本に入ってくるかは正直読めないが、動向がまだまだ気になるクルマなのである。

日刊ゲンダイDIGITALを読もう!

  • トピックスのアクセスランキング

  1. 1

    大阪・関西万博の前売り券が売れないのも当然か?「個人情報規約」の放置が異常すぎる

  2. 2

    大阪万博の「跡地利用」基本計画は“横文字てんこ盛り”で意味不明…それより赤字対策が先ちゃうか?

  3. 3

    日経新聞コラム「私の履歴書」で、伊藤忠の“ドン”岡藤正広会長の肝心なネタがスルーされた思惑

  4. 4

    吉村府知事が語った大阪万博の「魅力」に失笑買い話題騒然!地方局TV情報番組で売り込み発言も具体性ゼロ

  5. 5

    開幕まで2カ月も大阪万博ご難続き…入場券販売不振で“政敵”に泣きつき、海外パビリオン完成もわずか数カ国

  1. 6

    「貸金庫事件」の三菱UFJ銀行・半沢淳一頭取の全銀協会長就任にOBらが懸念

  2. 7

    ドミノ・ピザ大量閉店で見えた業界の“地殻変動”…今やライバルは、ピザハットとピザーラだけにあらず

  3. 8

    備蓄米放出でも政府はコメ価格を下げる気なし…識者が見解「相場を維持したい」思惑とは

  4. 9

    ガソリン全国最高値の長野県「石油商業組合」に独禁法違反の疑いでメス! 公取委が重い腰上げた裏に自民の弱体化か

  5. 10

    大阪万博“引き抜き人事”に労組が抗議書提出の異常事態…府職員からは「通常業務さえままらない」の悲鳴

もっと見る

  • アクセスランキング

  • 週間

  1. 1

    大谷翔平の28年ロス五輪出場が困難な「3つの理由」 選手会専務理事と直接会談も“武器”にならず

  2. 2

    “氷河期世代”安住紳一郎アナはなぜ炎上を阻止できず? Nキャス「氷河期特集」識者の笑顔に非難の声も

  3. 3

    不謹慎だが…4番の金本知憲さんの本塁打を素直に喜べなかった。気持ちが切れてしまうのだ

  4. 4

    バント失敗で即二軍落ちしたとき岡田二軍監督に救われた。全て「本音」なところが尊敬できた

  5. 5

    大阪万博の「跡地利用」基本計画は“横文字てんこ盛り”で意味不明…それより赤字対策が先ちゃうか?

  1. 6

    大谷翔平が看破した佐々木朗希の課題…「思うように投げられないかもしれない」

  2. 7

    大谷「二刀流」あと1年での“強制終了”に現実味…圧巻パフォーマンスの代償、2年連続5度目の手術

  3. 8

    国民民主党は“用済み”寸前…石破首相が高校授業料無償化めぐる維新の要求に「満額回答」で大ピンチ

  4. 9

    野村監督に「不平不満を持っているようにしか見えない」と問い詰められて…

  5. 10

    「今岡、お前か?」 マル秘の “ノムラの考え” が流出すると犯人だと疑われたが…