「地震保険」加入から支払いまで総チェック 能登半島地震の被災地ではいまなお倒壊家屋が
能登半島地震で甚大な被害を受けた石川県珠洲市や志賀町などでは、いまなお倒壊家屋が残る。復興には10年単位の時間がかかる見込みだ。正月ムードを一変させた能登半島地震で、改めて地震の怖さを思い知らされただろう。そんな地震の被害を補償する保険が地震保険だ。地震保険の基本をチェックしよう。
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地震保険の説明をする前に簡単に火災保険の仕組みを紹介しよう。火災保険は、火事や落雷、爆発などの火災のほか、強風や雪、台風などの自然災害、さらに盗難や自動車の衝突など偶発的な事故などによる建物や家財の損害を補償する。ここに記した自然災害に、地震は含まれない。地震による家屋や家財の補償に特化した保険が、地震保険だ。
地震が発生すると、その揺れで建物にヒビが入ったり、最悪の場合、倒壊したりする。部屋の中では、家具や家電なども被害を受けるだろう。地震保険は当然、そんな地震そのものを原因とする家屋や家財を補償する。さらに2つ目は津波や噴火などによる損壊や流出、埋没などもカバー。そして3つ目は、そんな地震などによって発生した火災による被害、火災が地震によって延焼・拡大した場合の被害なども補償の対象だ。
こうしてみればお分かりの通り、地震保険と火災保険はそれぞれ補う形で存在する。地震保険を単独で契約できないのはそのためで、火災保険に地震保険を付帯して契約するのが基本だ。付帯する場合、建物と家財はそれぞれ契約する。現在の契約が火災保険のみの人が、後から地震保険を付帯することは可能だが、別の保険会社で地震保険だけ“後づけ”することはできない。
一部の火災保険では、地震火災費用保険金が支払われるケースもある。それでも火災保険金額の5%程度で、地震保険の補償とは異なる。
■付帯率は平均7割。ワースト長崎は55%
地震保険も火災保険も契約は任意だが、住宅ローンを利用する場合、火災保険の加入が借り入れの条件になることがよくある。そのため内閣府の試算によると、持ち家世帯における火災保険加入率は82%に上る。
では、地震保険の付帯率はどうか。全国平均は2023年3月末で69.4%。毎年のように大地震が相次ぐだけに年々右肩上がりだが、それでも3割は未加入だ。ちなみに世界中に地震の恐怖を知らしめた東日本大震災が発生する前の2010年は、半数以下の48.1%だった。
前述の通り持ち家派の火災保険加入率は8割。そこに全国平均の地震保険付帯率の約7割を当てはめると、持ち家派全体で地震保険の加入率は大体56%。「ウチは大丈夫」と軽く考えている人が少なくないことが見て取れる。耐震性に優れたマンションなどなら安心かもしれないが、揺れに強くても隣近所から火が出る恐れはある。そのピンチに地震保険ナシでは、心もとない。
地震保険の付帯率には地域的なバラつきがある。昨年3月末時点で都道府県別のトップ5は、宮城(89.3%)、高知(87.5%)、熊本(85.9%)、宮崎(84.3%)、鹿児島(84.1%)だ。1位の宮城は東日本大震災の翌12年、前の年に比べて約12ポイント増の81.1%になってから全国トップを守り続けている。熊本も、16年4月の熊本地震を境に付帯率がグンと伸びた。
逆にワースト5は長崎(54.8%)、沖縄(57.6%)、東京(61.9%)、北海道(62.7%)、佐賀(63.2%)の順。能登半島地震に見舞われた石川は64.7%で40位。全国平均に劣っている。地震保険付帯率の低さも、復興の遅れに影響しているのかもしれない。
都内の保険代理店「保険ステーション」の営業担当者は、「私が火災保険を扱う場合、必ず地震保険の付帯をお願いしています。後々、トラブルになりやすいので」と話す。大地震に襲われてから、地震保険のことに気づいても遅いのだ。