マー君は習得に2年…投手が挑む「スプリット」の難度と利点
メリットが大きいSFFだが、簡単には「持ち球」にできない。
「落差だけならともかく、自分の思ったところに制球できるまでには2年ぐらいかかる。マー君(田中)ですら11年シーズンから投げ始め、完全にマスターしたのは昨シーズンです。それまではずっと握り具合などを研究していました。私も近鉄時代に投手コーチだった小野さん(和義氏)から教わりましたが、握りの際、自分に合う指の開き具合、微妙な力のかけ方を見つけるのがとにかく難しい。その難しさから、私はSFFを遊び球にして、シュート習得に転換しました」(山村氏)
手の内に入れるのが難しいだけに、武器にすればその威力は絶大だ。
メジャースカウトは今、日本投手を評価する際、「SFFの精度」を重視する。田中がヤンキースと7年総額160億円以上の大型契約を結べたのは、SFFの精度が高いからに他ならない。
■当てる技術が向上してきた
最下位ヤクルトの新人小川が26試合で16勝(4敗、防御率2.93)を挙げることができたのも、握りの深さにより、落差と球速を変えるスプリットのおかげ。1200万円の年俸は5600万円にアップ。開幕前はSFFを進化させるため上原(レッドソックス)に指導を仰いだ。