本田圭佑「虚像と実像」(14)へこたれないオリンピアンの血脈
親族3人がオリンピアンという本田ファミリー。その「本質」を大三郎は「心身ともに決して恵まれた家系ではない」と前置きしたうえで、こう続ける。
「むしろ本田家は弱者の集団と言っていい。なので、ひとつのことを徹底的に追求していくしかない。その上で《スポーツは鍛錬すれば、必ず誰でもうまくなれる。そう固く信じる気持ちを強く持ち続ける》ことが大事になる。私も多聞も同じ思いで精進し、ある程度の結果を残すことが出来ました。幼少期の圭佑は、私たちの言動に少なからず影響を受け、同じような精神を兼ね備えたことで《今の圭佑》があると思っています」
本田が、オリンピアン2人に強烈な憧れを抱き始めたのは、ちょうど3歳上の兄(弘幸)が中学に通い始めた頃だった。
カヌー日本代表監督を務め、全国各地を転々としていた大三郎が、ある日、本田の育ての親である実兄の満(故人)宅に立ち寄った。2階の6畳間で寝転がっていた本田は有名な大叔父の来訪に跳び起き、目を輝かせながらこう聞いた。
「なあ、おっちゃん。どうすれば、おっちゃんや多聞兄ちゃんみたいに強くなれるんや?」