本田圭佑「虚像と実像」(9)友人宅に上がり込み食い尽くす
ピッチ内では「ヘタクソ」。ピッチ外では「傍若無人」。ガンバ大阪ジュニアユースのチームメートの大半が、本田への“対応”に頭を抱えるようになった。
連れ立ってカラオケに行く。本田はマイクを離さず、大好きなラルクアンシエルの歌を何度も何度も熱唱。周囲から「おい、ええかげんに代わらんか!」と怒鳴られても聞く耳を持たない。
両親が離婚し、親代わりの祖父母は朝から夜遅くまで働き通し。練習後、家に帰っても食事にありつけないことは日常茶飯事だった。外食するような金銭的な余裕もない。窮余の一策は、チームメートの「自宅訪問」だった。
ジュニアユースの練習が終わると、決まってめぼしい仲間を捕まえる。
「おまえんちで晩メシ食ってもええか?」
そう持ちかけOKが出ると、鋭い眼光をニヤリとさせ、そそくさと友人宅に転がり込んだ。
食卓に上ったものは遠慮なく平らげる。ご飯を何杯もお代わり。炊飯器が空になっても平然とし、食後にはちゃっかり風呂に入って帰っていくことも珍しくなかった。