引退先送り…“走るビジネスマン”ボルトの「カネ」と「計算」
世界最速の男が最後に一旗揚げようと躍起になっている。
引退を先延ばしした陸上男子100メートル(9秒58)、200メートル(19秒19)で世界記録を持つウサイン・ボルト(27=ジャマイカ)のことだ。一度は16年リオ五輪を最後に引退すると表明しながら、ここにきて一転。17年世界選手権(英国・ロンドン)までの現役続行をほのめかした。さらに、今後は種目の掛け持ちをやめ、「100メートルではもう十分にやったと思う。200メートルに狙いを定める」と明かした。
もともと、ボルトはジュニア時代には200メートルを得意としており「19秒を切りたいとずっと言ってきた。それが自分にとって最大の目標であり夢だ」と断言。200メートルで前人未到の18秒台をマークして引退に花を添えたいのだろう。
■スタミナに不安
ボルトは今月21日で28歳。三十路を前に200メートルに照準を絞ったのは100メートルでは勝ち目はないと判断したからにほかならない。11年の世界選手権(韓国・大邱)100メートル決勝でフライングを犯して失格になるなど、スタートが不得手。若手の台頭も著しく、今季はトレイボン・ブロメル(19=米国)が6月の大会で9秒97をマーク。ジュニアでも9秒台を出す選手が現れ、世界の短距離界は世代交代に差し掛かっている。さらに2種目を掛け持ちすれば、2日間で最大6レースをこなすため、スタミナにも不安が生じる。
ボルトは世界記録更新、世界選手権、五輪優勝で契約するスポンサー企業からそれぞれ1000万円のボーナスが支払われる。「二兎を追って一兎も得ず」という事態だけは避けたかったのだ。