大物のトレードがなくなった背景
そんな今、たとえば人気球団のエースがトレードに出されようものなら、たちまち球団は批判の嵐にさらされる。ネットがなかった時代なら、決まってから苦情電話やファンが会社に押しかけるくらいで済んだだろうけど、「監視社会」のなかではそうはいかない。ましてプロ野球界は「ムラ社会」。トレードのようなトップシークレットの話であっても、成立前に外部に漏れても不思議ではない。
こうして、血も涙もないようなトレードがなくなってしまったわけだが、これと並行するように、プロ野球選手にも「荒くれ者」が消えてしまったように感じる。性格がトンがっているような選手ほど活躍したものだけど、00年代前半、清原和博や伊良部秀輝らを最後にパタッといなくなった(まあ、こういう選手が出されやすかったことも事実なのだが)。
今をときめく大谷翔平なんて、イイ子ちゃんで優等生の見本みたいな性格をしている。漫画の世界でも同様で、昔の方がアナーキーでトンがった作品が多かった。昔は角が立つのを恐れていなかったように感じる。
いろんなものの角が取れて丸くなった。それはトレードひとつとっても。時代は変わったと言われればそれまでだけど、息苦しい世の中になってしまったもんだ。