大物のトレードがなくなった背景
大物選手の「電撃トレード」がなくなって久しい。最近では、糸井嘉男が日本ハムからオリックスへトレードされたことがあったくらいだ。
昔は、球団が扱いに困り、腫れ物に触るようにトレードされる大物選手がいた。阪神のエース江夏豊が南海にトレードされたり、主砲の田淵幸一が西武に行ったり。三冠王の落合博満は4対1のトレードでロッテから中日へ。巨人の定岡正二が近鉄へのトレードを打診されて引退するなんて、今の時代じゃ考えられないことだった。スポーツ紙にトレードにまつわる“うわさ話”が出るたび、「エーッ」とワクワクドキドキさせられたものだ。
日本人は人事が好きだ。これは「グラゼニ」の原点でもあるんだけど、どんな小さな会社でも誰が部長になるかとか、失脚するかは大きな関心事。FAではいつの時点で権利を取得できるかわかってしまう。今のプロ野球には電撃トレードにしかないエンタメ度満載の「ドキドキ感」がないのだ。
今の社会の風潮がプロ野球界にも波及しているのかもしれない。ネット社会になり、企業はコンプライアンスを重視。好感度だったり対外的な目をものすごく気にしている。ちょっとでも問題が起ころうものなら、ソーシャルサイトや掲示板が「炎上」するかもしれない、いつ誰に「内部告発」されるかわからないと、ビクビクしている。波風を立たせないでおこうと考えるのは当然で、かくいう僕もそういうことを気にしながら執筆しているのが正直なところだ。