<第14回>「仏様が見守ってるから大丈夫」寺の本堂でうそぶきながらバクチに興じる親方がいる
他にもチンチロリンや麻雀をする力士もいなくはないが、手軽で場所や道具がかさばらない花札が1番人気。中でも親と子、合計4枚しか札を使わない「バッタ」は短時間で勝負がつく。賭け金は最低1000円から。力士の番付に従ってレートは高くなり、一勝負1万円になることも。ある力士は熱中するあまり、夏巡業中だけで数百万円の大負け。貯金を切り崩しても足りず、カネを集めるために親戚中に頭を下げて回った。
外国人力士の多くは花札やチンチロリンは好まない。ルールを知らないからだ。せいぜいがパチンコ。欧州系の力士の中には裏カジノでトランプゲームをする者もいるという。あるモンゴル人力士は「僕らも賭け事をしないわけじゃない」と言う。
「モンゴルには『ダル』と呼ばれる麻雀に似たゲームがある。麻雀で丸が書いてある牌があるでしょ。ピンズっていうんですか? それを使って役をつくる。人数は5人くらいがちょうどいいのかな。2人は無理でしょう。僕も学校を卒業してすぐに日本に来たので、あまりやったことはないですが……」
暴力団も絡んでいた野球賭博問題では、当時大関だった琴光喜と元大嶽親方(元関脇貴闘力)がクビになった。その後、しばらくは力士たちも自粛していたとはいえ、寺の本堂でバクチに興じながら、「仏様が見守ってるから大丈夫だ」と言う親方がいる角界だ。バクチを切り離せというのは、どだい無理な話なのかもしれない。
(つづく)