ダルを長年見た日本人スカウトが語るMLB“サバイバル術”
「ケガをしづらいフォームだったり、少ない球数でも抑えられる制球力を身につけていることも大切です。ただ、スカウト時代はプロでもアマでも調査する選手が中学、高校時代にどんな練習をしているか、どれだけ肩肘を使っているか、もっといえば食事に好き嫌いはあったのか、魚が嫌いなら骨が少しもろいかもしれないな、というところまで調べていた。アマの頃の練習環境、普段の生活の様子というのは、将来に影響することが多い。評価するにあたって大事な要素です」
メジャーでプレーする際、10代の過ごし方が大切なら、10代からアメリカで野球を学び、そのままメジャー入りする方がより近道で、長生きできるのではないか。
「それは確かにあります。アメリカでは中学生の時からエージェントがついて、練習方法や試合などさまざまな面でメジャーのやり方を踏襲している。日本のように中学、高校からバンバン投げ込みをして(肩を)つくってということはなく、個性を大事にして年齢と体の成長とともに徐々につくっていく。技術も野球に対する考え方も、日本とアメリカでは大きな違いがあります。子供の頃からアメリカに行けば、向こうの野球に自然に慣れていける。アメリカで生活するわけだから、言葉や文化を学んだりもできる。マイナー契約でルーキーリーグからスタートするので、時差や気温差も関係なく試合をこなし、長時間のバス移動も早いうちから経験します。通訳もいないし、寮もなく、アパート暮らしをしないといけない。過酷な環境を当たり前と思える精神力が鍛えられる面でも、大きく違ってくると思います」
身体能力に加え、精神的にタフでなければ生き残れないのだ。