KKドラフトのシナリオは二頭取りだった
ところが、ドラフト前夜の会議で競合覚悟でかなりの球団が清原を1位指名することがわかってきた(6球団が指名)。指名重複の末、抽選で清原を逃した上に、ダメもとで桑田を外れ1位で指名を強行する球団が出てくる可能性もある。そうなると、「二頭取り」どころか、ひとりも取れないケースもある。そこで急きょ、清原は諦め桑田1位に方向転換したという。
桑田は早大進学を断念。手のひらを返して巨人入りする。
「密約がうんぬんされましたが、当然あったと考えるのが自然でしょう。上京したとき、初めて桑田に会ってその意を強くしました」と若林氏はこう語る。
「桑田が入寮で上京したとき、当時の正力(亨)オーナーの命令で東京駅に迎えに行き、ホテルでフランス料理のフルコースを食べた。巨人軍の選手として恥ずかしくないよう、テーブルマナーを教えろということだった。ところが桑田はナイフもフォークの使い方も手慣れていたし、食事が終わるとディスコに行きたいと言い出した。その世慣れた態度に、ははあ、これはこれまで思惑を持った周囲の人間に、相当遊ばせてもらっているなと思いました。金銭や供応に対して脇の甘さも感じました」