権藤博氏が交流戦総括 「セの采配は“緻密”ではなく“怯懦”」
昔から「緻密なセ」、「豪快なパ」という野球観の違いを指摘されることが多かったが、そういうイメージと環境の中で育ってきた今のセの指揮官たちには、その緻密さをはき違えているようなところがある。
セのゲームを見ていると、例えば初回の無死一塁で2番打者に送りバントをさせるケースがなんと多いことか。あれだけの戦力を持っている巨人の原監督ですら、そういうことをする。
18日現在の数字を調べてみたら、犠打数はパの247に対してセは356。パはオリックスの45犠打が最多だが、これはセ最少のヤクルトの47犠打より少ない。
投手の立場で試合を見る私にとって、野球は27個のアウトを取るスポーツである。労せず1アウトをくれる送りバントは投手にとってこれほど助かるものはない。だから監督としては一貫して犠打の必要性を否定してきた。試合終盤での手堅い作戦までは切り捨てないが、中盤までにそういう作戦を多用されると、バカらしくて試合を見る気が失せてしまう。
サインを出す監督にとって犠打は「逃げ」だ。併殺で好機を潰すリスクを取るのが嫌だから送らせる。采配を振っている気にもなるし、失敗しても責任は選手にいく。犠打を多用することは「緻密」なのではなく、「怯懦」に近い。そういう消極的で後ろ向きな野球をやっていては、スケールの大きい選手が育つはずがないではないか。
(権藤博/野球評論家)