高橋由に「原野球の継承」を押しつける巨人に権藤博氏が苦言
球団が、そんな指揮官に最大限の敬意を表し、「原野球の継承」と口にするのは理解できるのだが、それを高橋由新監督に押しつけるのはまた違う話だ。原野球をそこまで評価しているのなら、原監督に続投してもらえばいいだけのこと。40歳の高橋由伸というフレッシュな人材をトップに据え、チームに新風を吹き込んで、また違ったジャイアンツを一から構築するのが監督交代の目的ではないのか。だったら、「原野球の継承」などと言って、やる前から新監督を縛り付けてどうするんだ。やりたいようにやってください、そのためのバックアップは惜しみません、というのが高橋由に対する誠意である。
今季から兼任コーチを務めていたとはいえ、高橋由には指導者経験が皆無と言っていい。それに対する不安が球団にはあるのだろう。私の結論を言えば、余計な心配をしなさんな、だ。コーチ歴の多寡は、監督としての能力を評価する物差しにはならない。指導者として30年近いキャリアのある私が言うのだから間違いない。今も昔も、指導者として長くユニホームを着ている人間は、傑出した能力があるか、突出したイエスマンかのどちらかだ。残念ながら、後者の方が少なくないのが実情である。
高橋由は都合12年間も原監督とともに野球をやって、いいところも悪いところも吸収しているはず。そこに自分のエッセンスを加えて、由伸流をつくればいいし、その感性が彼にはあると思う。
(野球評論家)