日本男子体操「伝説の補欠」が語る五輪演技“幽体離脱”体験
今年のリオ五輪で、個人総合連覇を狙う男子体操の内村航平(27)が、最も欲しいメダルが団体の金メダルだという。日本の男子体操はかつて、60年ローマ大会から76年モントリオール大会まで、五輪で5連覇を達成したことがある。実は、76年大会の本番直前、日本チームにアクシデントが起きた。74年世界選手権の団体、個人総合などで金を取った笠松茂が体調不良で欠場が決まり、日本体操史上初となる現地でのエントリー変更が行われた。見事代役を果たしたのが五十嵐久人氏(新潟大学教授)だ。そのドラマは、著書「補欠選手はなぜ金メダルを取れたのか」(中央公論新社)に詳しい。五十嵐氏に当時の話を聞いた。
――五輪の体操選手の代表と補欠というのは天と地ほど違うといいますね。
「私は代表選考会で、0・05の僅差で7位でした。6位までが代表ですから、補欠に回りました。日本の場合、現地に入った補欠がどれだけ調子が良くても登録変更はありません。各国の補欠は本番の2日前に会場に行き、指定された種目を演技する。それを見て審判団は採点し、基準点を確認する。これを『テストパイロット』と呼んでいます。補欠のレベルは、そのチームの採点に影響するので重要です。補欠は本番になると、踏み切り板の調整や鉄棒に飛びつく際の補助、ずれたマットの修正や国によっては代表選手のマッサージもやります」