3敗で綱とり絶望…琴奨菊は横綱より“名脇役”が生きる道
夢のままで終わらせた方がよい「夢」もある。
前日、稀勢の里に2敗目を喫し、後がなくなった大関琴奨菊(32)。10日目も立ち合いから豪栄道に差されると、なす術もなく、すくい投げで敗れた。
先場所優勝で綱とりを狙っていたが、3敗では絶望的。年齢を考えれば、これが最後のチャンスだっただろう。
だが、先のことを考えれば、これでよかったのかもしれない。琴奨菊は大関在位26場所中、2ケタ勝利はわずか8度。カド番も5回を数える。それが横綱に昇進したからと、急に強くなるわけがないからだ。
カド番制度のある大関とは異なり、横綱は負け越しが即引退につながる。賜杯を抱いた先場所がマグレとは言わないが、このままとんとん拍子で昇進したが最後、1年もたずに引退しかねない。
「がぶりに頼った攻めの一辺倒で、臨機応変の相撲は取れない。この日のように自分の型に持ち込めない、あるいは攻めをこらえられるとモロい。一芸特化は並の力士なら個性になっても、横綱としては厳しい。それでも大関ならば名脇役として土俵を沸かせることができるし、長く相撲を取れるだろう」(角界OB)
琴奨菊は支度部屋で「諦めない」と前を向いたものの、八角理事長(元横綱北勝海)は「(優勝争いからの)脱落が早かった」と、ため息だった。
もとより横綱はかなわぬ夢と諦め、存在感のある大関を目指すのも悪くはないのでは……。