元JBC事務局長・森田健氏が語るモハメド・アリの思い出
6月3日、元ボクシング世界ヘビー級王者のモハメド・アリがこの世を去った。享年74。長年パーキンソン病をわずらった末の敗血症ショックだった。
ボクシング界に王者は数あれど、アリほど偉大な王者は他にいない。元JBC事務局長で多くの世界戦を裁いた経験のある森田健氏は、アリとの思い出をこう語る。
「76年にアリがアントニオ猪木と闘った試合です。あの試合でジャッジを務めた遠山甲さんは私の先輩。試合に招待された私は遠山さんを控室に訪ねた。すると、ちょうどアリがいたんですよ。そこで私はアリに挨拶をして、握手をしてもらいました。私も元プロボクサーですが、なにせフライ級。ニコニコして握手に応じるアリの手は私の倍くらいあって、ゴツゴツと硬かったのが印象的でした」
森田氏は後年、WBC総会の場で病に侵されていたアリと再会。再び握手をしたが……。
「病気の影響か手が震えていた。大きさは変わりませんが、ゴツゴツしていた現役時代と違って、柔らかくなっていましてね……。何か悲しい、寂しいものを感じました。晩年のアリは車椅子でWBC総会に出席。常にステージの上にいて、紹介の際は軽く手を挙げて応えると、万雷の拍手が沸きました」
伝説は伝説のまま、天国へと旅立った。
(森田健・元JBC事務局長)