日馬富士が「待った」のタップ…結びの一番で起きた珍事
ファンも報道陣も、何より当事者たちが最も困惑していた。
3日目の結びの一番で、波乱とは呼びにくい、不可思議な現象が起きた。向かい合うのは横綱日馬富士と、平幕の琴奨菊。「はっけよい……残った!」の合図とともに一人横綱が仕掛けた――と、思いきや、なぜか日馬富士は組んだ直後に「待った、待った」と言わんばかりに琴奨菊の肩をタップしたのだ。
ところが、行司は止めず、審判も動かず。日馬富士は力なく寄り切られ、今場所初黒星。勝負が決まった後も不満げに右手を挙げて「待った」をアピールする横綱に、観客も困惑することしきりだった。
日馬富士にすれば、呼吸が合わず、自分が「つっかけてしまった」と思い込み、立ち合い不成立になると判断したのだろう。しかし、ちょうどそのタイミングで琴奨菊も立ち上がったものだから行司も立ち合いを成立させてしまった。
確かに琴奨菊は手つきが遅く、実際、ほとんど手をつかずに立ち上がった。日馬富士も勝手な思い込みで力を抜いたのは、油断以外の何物でもない。ちなみに長らく大関を張っていた琴奨菊にとって、これが自身初金星。もっとも、こんな形じゃ素直に喜べないだろうけど。