衣笠祥雄さんの死に思う “鉄人”と簡略化することの危うさ
元広島の衣笠祥雄さんが亡くなった。享年71。鉄人と呼ばれた男にしてはあまりに早すぎる死。なんでも、大腸がんを患っていたという。
このニュースがいかに衝撃的であったかは、大阪のデイリースポーツが1面で報じたことからもよくわかる。いつなんどきでも阪神推しの1面で知られるデイリーが特例を認めたということだ。
もちろん、団塊ジュニア世代の私にとってもそうだった。衣笠さんといえば少年時代のスーパースターである。当時から虎党だった私は掛布雅之に心酔する一方で、黄金時代の赤ヘル軍団を支えた、いわゆるYK砲(山本浩二&衣笠祥雄)に畏怖の念を抱いていた。
とりわけ衣笠さんは不思議な選手で、なんというか野生動物がそのままバットとグラブを持っているような、技術よりも勘と本能でプレーしているような、そんな荒々しい迫力を感じさせた。のちに彼がアフリカ系アメリカ人と日本人のハーフであることを知り、その外見も含めて妙に納得したことを覚えている。
そして今回の訃報を受けて、当然のようにクローズアップされる連続試合出場記録。どの報道においても、この偉業のおさらいが大半を占めていて、あらためて日本人は皆勤賞の類いを好む、つまりケガや病気をこらえる根性を美徳とする民族なのだと思い知った。