宮川選手が告発 体操界の“女帝”塚原本部長パワハラの全貌
塚原夫妻も暴力指導を容認か
今回と酷似した事件は以前にもあった。
2013年当時「羽衣体操クラブ」の井岡淑子コーチが指導中、女子選手2人に暴行したとして、傷害容疑で書類送検された。1人は10年に階段から突き落として打撲。もう1人は11年に髪を掴んで振り回し、鼻を殴って骨折させた。井岡氏は15年に無期限登録抹消処分に。この日、協会が会見の冒頭で口にした「本会は平成25年以来、一貫して暴力撲滅に取り組んでおり……」というのは、この事件を指している。前出の体操関係者が言う。
「井岡コーチの場合、今回の件と違って本当に暴力がヒドかった。被害者選手の親が助けを求めたことで発覚、妥当な処分といわれました。けれども事件には裏があった。当時、『羽衣体操クラブ』で井岡コーチが教えていた選手の中に杉原愛子という選手がいました。現在、朝日生命に所属する代表候補選手です。コーチの不祥事を機に、『それならうちで練習しなさい』と本部長側が声をかけ、朝日生命に引き取られる形で移籍している。つまり、塚原本部長は事件を利用して有望選手の引き抜きに成功したことになるのです」
宮川選手は会見で、代表選手とは別件で協会に定められた「2020年東京五輪特別強化選手」(以下、2020)についてこう話していた。
「代表選手を追い抜いて海外派遣を受けたり、ナショナル選手より上の立ち位置で優遇される。トライアウトを受けて、強化本部長に許可されると(「2020」に)なれるが、すごく不透明。詳しく調べてもらいたい」
戦略が不透明だったため宮川選手が参加を拒むと、NTCの利用を制限されたという。圧力に負け、6月にメンバー入り。「五輪に出られなくなると言われて入った。活動する中で、合宿という実態がなかったり、あまりにも不透明なところが多く、脱退を希望しているところ」と話した。
■「日本のコーチはクレージー」
今年度の体操女子ナショナルコーチの中には朝日生命所属のコーチや塚原本部長と親しい指導者も在籍している。別の体操関係者が言う。
「朝日生命のコーチはナショナルコーチとしてJOCから給料をもらっているのに、普段は朝日生命でチームの指導をしている。NTCでも朝日生命の選手しか熱心に指導しないそうです」
宮川選手の告発から1時間半後、体操協会が会見。山本専務理事は「たとえ五輪のためだったとしても暴力は断じて許さない。暴力の根絶を徹底していきたい」と語気を強めた。しかし、あろうことか、塚原夫妻もその暴力指導を容認していたというウワサもある。
「朝日生命の選手や出身者が被害者です。試合中にもかかわらず選手を陰に連れていってビンタしている現場は複数の人に目撃されている。昔はもっとヒドかった。演技に失敗して頭から落ちて脳震とうを起こしている選手を、心配するどころか裏でボコボコにしていたという話まであるほど。そういった暴力指導を看過していたというのです。国際大会だったので、海外の選手は『日本のコーチはクレージーだ』と目を白黒させていました」(前出の関係者)
こんな話も聞こえてくる。
「朝日生命の試合に出場できるかどうか瀬戸際の選手の親は、塚原夫妻への付け届けが必須だといいます。中身によって優遇されたり、渡さなければ出場の可能性が低くなるともっぱら。お中元やお歳暮を贈ったら、気に入らなかったのか、送り返された人もいるそうです」
宮川選手の投じた一石は果たして、体操界の闇にメスを入れることになるのかどうか。