試行錯誤を経てたどり着いた「バントは時間稼ぎ」の極意
プロ14年で記録した犠打は302。歴代5位の数字ですが、最初はハッキリ言って下手でした。
バントの記録は仕事に徹した積み重ねだと受け止めています。プロ入りしてからずっと、バントのサインが出ない打者を目指してやってきました。「打ちたいのにな。クソー」と心の中でつぶやきながら、バントをしたこともあります。そういうときは得てして失敗したものです。
もちろん、3割30本を打てれば言うことはありません。ズバぬけた長所がない僕がプロで生きていく術は何かと考え、バントの技術を磨くことで常時出場できるようになったという手応えはあります。
打率は3割あれば成功ですが、バントには10割が求められます。ベンチは確実に決めてほしいときにしかサインは出しません。
僕はプロで一定の期間が過ぎてから、「野球は仕事」と割り切って考えるようになりました。だから、バントを決めてガッツポーズをした記憶は一度もない。決めて当たり前という中でコツコツ転がし、走者を進めてきたことが人生観にも影響しているかもしれません。